「若い星のまわりで惑星(わくせい)が生まれる現場の観測」とかけて「犯罪そう査」ととく。答えは「どちらも指紋(しもん)を調べる」です。面白そうでしょ?どういうことか見てみましょう!
若い星のまわりにはガスとチリが集まって円盤(えんばん)のような形を作っています。この円盤は原始惑星系円盤とよばれます。この円盤の中では星間ガスやチリがあばれまわっています。ぶつかり合ってくっついたりしてかたまりになっていきます。ちょうど雪のかたまりがだんだん大きくなって雪だるまになるような感じです。これが惑星が作られる初めの一歩だと考えられています。 円盤の中のチリやガスがこのように動き回る理由はいろいろありますが、ここでは磁場のはたらきに注目してみましょう。
二つの磁石であそんでいて、並べ方によってくっつこうとしたりはなれようとしたりすることに気づいたことはありますか?磁石には目には見えない「磁場」というものがあり、まわりにあるものの動きに影響(えいきょう)を与えることがあります。 天文学者たちにとってこの磁場を研究することはとても重要です。チリのつぶがどのように動いて惑星を作っていくのかを知るのに役立つからです。でもこれまでは原始惑星系円盤の中の磁場を観測するなんてムリ!だったのです。
日本の国立天文台を含む国際研究チームはアルマ望遠鏡を使って若い星「HD142527」をとりまく原始惑星系円盤を観測してきました。この星はおおかみ座の中にあり太陽系から512光年はなれています。
研究チームはこの原始惑星系円盤の一部に大量のチリが集まっているのを発見しました。これで惑星形成の現場を押えることができるかもしれません! アルマ望遠鏡からのデータを調べるとチリのつぶの動きにはパターンがあることがわかりました。これは目に見えない磁場があるということを意味しているかもしれません。「姿が見えないこと、これがわたしのとくしゅ能力なのさ」とまるで磁場がそういっているようです。
研究チームはさらにくわしくチリのつぶの動きのパターンを調べて、磁場の立体的な形を初めてつきとめることができました。この大変な調査の結果、この原始惑星系円盤の磁場の強さは、みなさんの家の冷蔵庫のドアにくっついている磁石のたった300万分の一しかないことがわかりました。そんなに小さいものがこんなに大きなことを起こすなんておどろきですよね!
天文学者たちは今、意欲的にこの磁場の「指紋を調べる」方法をもっとほかの原始惑星系円盤、地球のような惑星ができた恒星(こうせい)に近い場所にある円盤に使ってみようとしています。そうすれば磁場が惑星の形成にどのように影響(えいきょう)を与えているのかがわかるでしょう。
画像:若い星「HD 142527」を取り巻く原始惑星系円盤の電波強度マップ。白の短い線は、チリの方向でわかった磁場を示しています
クレジット:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), S. Ohashi et al.
国立天文台による日本語サイトあり https://www.nao.ac.jp/news/science/2025/20250206-alma.html
この記事は日本国立天文台の報道発表によります