星の内部で作られるのは酸素だけではありません。星の超高温になった中心核では、私たちの歯を作るカルシウムやしょっぱい塩を作るナトリウム、そして私たちが見たり、さわったり、感じたりできるすべてのものを作り出しています。つまり、星は驚きに満ちているといえます・・・・星はすべてのものを作り出しているのですから。
望遠鏡は、ある意味では、はるか遠くの銀河へ向かうタイムトラベル・マシンです。光は宇宙のどんなものよりも速く動きます。たとえば、太陽からの光が地球に届くまでには約8 分かかるので、私たちが顔に感じる太陽の光は、実際には約8 分前のものです。天文学者が望遠鏡を使って宇宙の銀河を観測すると、近くにある成長した銀河も遠くの若かった時の姿の銀河、つまり非常に古い時の姿の銀河も同時に見えるということです。
天文学者は、あらゆる種類の銀河からの光を研究することで、宇宙の歴史をのぞき見ることができ、銀河ができる順番を示す「宇宙の年表」を作ることができます。最近まで、天文学者はこの年表がどのようなものであるかをかなり良い考えを持っていると考えていました。しかし、新しい研究で見つかった新たな事実により、あらためて考えなおさなければならなくなりました。
2つの異なる研究チームが、私たちが知る限り最も遠くからやってきた光で見える若い頃の銀河JADES-GS-z14-0 を研究していました。現在観測されている光がこの銀河から発せられたのは、なんと 134 億年前で、太陽系はまだこの宇宙に存在していませんでした。そのため、2つの研究チームがデータを分析したところ、他の若い銀河には見られないユニークなものを見つけて驚きました。
何がユニークだったのでしょう? ・・・・そこには酸素があったのです!
酸素があっても大したことではないように聞こえるかもしれません。酸素は私たちの周りにどこにでもありますから。しかし、銀河がある年齢(ねんれい)になるまで持つことができないものがあります。まるで運転免許証が18歳にならないと取れないようなものです。
酸素は、より前の世代の大質量星で作られ、星が死ぬときに超新星爆発によって宇宙にばらまかれます。JADES-GS-z14-0 のような若い銀河で酸素が見つかるということは、観測している星が私たちが考えていたよりも前の世代の星ということでなければなりません。研究者たちは、予想よりもはるかに短い時間で少年期のような星をふくむ成長した赤ちゃん銀河を発見したことになります。
この急速に成長する銀河の発見は、宇宙が生まれた当初の数年間について、答えよりも多くの疑問を天文学者に与えることになりました。銀河は、宇宙のタイムラインで考えていたよりももっと早いころに作られたのでしょうか? 銀河は私たちが考えていたような形では成長していないのかもしれません。このことは、私たちが知っていることにどう関わるのでしょうか? こうなると思っていたこととは全く別の疑問が出てきます。このような疑問や不思議発見があることこそ、天文学のすばらしいところです。天文学者はさらなる研究を進めています。
画像:この画像は、星と銀河が広がる夜空のごく一部を示しています。JADES-GS-z14-0 銀河の一部を拡大しています。拡大した画像は、明るい白い中心部を持つ拡散した青い雲です。 クレジット: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/S. Carniani 他/S. Schouws 他/JWST: NASA、ESA、CSA、STScI、Brant Robertson (UC Santa Cruz)、Ben Johnson (CfA)、Sandro Tacchella (Cambridge)、Phill Cargile (CfA)
星の内部で作られるのは酸素だけではありません。星の超高温になった中心核では、私たちの歯を作るカルシウムやしょっぱい塩を作るナトリウム、そして私たちが見たり、さわったり、感じたりできるすべてのものを作り出しています。つまり、星は驚きに満ちているといえます・・・・星はすべてのものを作り出しているのですから。