ブラックホールからふき出すジェットついて、知っておきたいことがたくさんあります。そのひとつで、天文学者が知っているのは、ジェットはとんでもないエネルギー源だということです。ブラックホールのすぐ近くで発生し、もとの銀河からもぬけ出して、ものすごく遠くまで旅することができます。まるで、きょ大な電源コードのようですね。上の図では、さまざまなスケールでジェットの画像を見せていますが、長さを確認してください。
2年前、世界中の人々は初めて「超大質量(ちょうだいしつりょう)ブラックホール」の顔写真を見ておどろき感動しました。イベント・ホライズン・テレスコープ・チームが見せてくれた、約5500万光年はなれた銀河 M87 の中心にかくれている怪物(かいぶつ)の写真です。
今週、19台の望遠鏡が、このきょだいなブラックホールを同時に観測したデータを発表しました。アインシュタインの一般相対性理論(いっぱんそうたいせいりろん)も使って、もっとくわしく理解できるデータです。
一般相対性理論では、重力を、重い物体のまわりにできる時空のゆがみととらえます。
わかりにくいですか?(プロ選手が使うような)重いサッカーボールか、重い箱を、ふわふわのベッドに置いてみてください。そして、そのまわりにビー玉をおくと、どうなるでしょう?ベッドに「しずみこみ」ができるため、ボールや箱の方に落ちていきますよね。ボールが重いから、ベッドの表面がへこむのです。このボールを惑星(わくせい)に置きかえて考えると、宇宙では、惑星のまわりの「しずみこみ」が時空のゆがみにあたります。
惑星が重ければ重いほど、ゆがみは深く、しずみこみが大きくなります。そしてビー玉にあたる小さな天体は、より強く引っぱられます。
ものすごく重力が強く、宇宙で最もすごいしずみこみであるブラックホールは、きょくたんな状態でアインシュタインの一般相対性理論がどう作用するかを見る、絶好の場所ということになります。
ブラックホールのものすごい重力は、ものすごく速いスピードでものすごいきょりをつき進むジェットを作ります。それは本当に速く、光に近いスピードで飛んでいくのです。ジェットは私達の目で見える光から、見えない紫外線(しがいせん)やX線(エックス線)まで、さまざまな種類の光(電磁波:でんじは)を出します。
ブラックホールのジェットは、それぞれちがう特ちょうを持っています。特ちょうのパターンを知ることにより、天文学者はブラックホールの回転や、持っているエネルギーの手がかりをつかむことができます。しかし、パターンが時間とともに変化するので、なかなか難しいです。ブラックホールにもっと近よって、細かく調べなければいけません。そのため、19台の望遠鏡のデータを比べることが重要なのです。
同時に観測したいろいろな写真やデータを使うことで、天文学者はブラックホールとそこから飛び出すジェットの関係を解き明かしたいと考えています。何しろ、天文学の大きなナゾのひとつですから!
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この画像は、2017年(世界に向けての発表は2019年)に、M87の中心にあるブラックホールが初めて写真にとられた時の、様々な望遠鏡での見え方を合成したものです。世界中と宇宙にある19台の望遠鏡が観測したデータをあわせたこの画像を見ると、M87のブラックホールの大きさや、ジェットがこの銀河のはしっこより遠くまでふき出している様子がわかります。
画像提供:The EHT Multi-wavelength Science Working Group; the EHT Collaboration; ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); the EVN; the EAVN Collaboration; VLBA (NRAO); the GMVA; the Hubble Space Telescope; the Neil Gehrels Swift Observatory; the Chandra X-ray Observatory; the Nuclear Spectroscopic Telescope Array; the Fermi-LAT Collaboration; the H.E.S.S collaboration; the MAGIC collaboration; the VERITAS collaboration; NASA and ESA. Composition by J. C. Algaba
ブラックホールからふき出すジェットついて、知っておきたいことがたくさんあります。そのひとつで、天文学者が知っているのは、ジェットはとんでもないエネルギー源だということです。ブラックホールのすぐ近くで発生し、もとの銀河からもぬけ出して、ものすごく遠くまで旅することができます。まるで、きょ大な電源コードのようですね。上の図では、さまざまなスケールでジェットの画像を見せていますが、長さを確認してください。
この記事は、日本の国立天文台からの報道発表によっています。