ガンマ線バーストは、私たちの宇宙で、最も高エネルギーで最も明るい電磁波(でんじは:光のなかま)を大量に放出する現象です。
天文学者は、宇宙のはてにある遠い天体までのきょりを、一体どのように測っているのでしょうか?
日本の国立天文台(NAOJ)のマリア・ダイノッティ助教が率いる国際研究チームが、その新しい方法を発見したのです。
同じ明るさの天体でも、遠くにあると暗く見えます。天文学者は、本当の明るさがわかっている天体を「標準光源(ひょうじゅんこうげん)」にして、見かけの明るさを測ってきょりを求めます。しかし、110億光年以上はなれた遠い宇宙で、十分に明るい標準光源をみつけるのは非常に難しいのです。遠くなればなるほど、つまり宇宙の始まりに近づけば近づくほど、きょりの測定に使える標準光源が見つかりにくくなります。
標準光源とは、遠いか近いかで変わる見かけの明るさではない本当の明るさが、常に同じ天体のことです。科学者はふだんそれらを、遠い宇宙までのきょりの測定に使います。地球から見える見かけの明るさと、本当の明るさを比べることで、標準光源とその近くにある天体までのきょりがわかります。
110億光年もはなれた宇宙では、遠いほど、標準光源として使える天体が少なくなります。そこで、マリア・ダイノッティさんのチームは、よく使っている天体とは別の標準光源を探し始め、ガンマ線バーストが使えることを発見しました。ガンマ線バーストとは、とても重い「大質量星(だいしつりょうせい)」が一生を終える時の大ばく発です。ばく発の時に、ガンマ線という放射線を大量に放出するので、この名前がつきました。
ガンマ線バーストはとても明るいのですが、明るさは、ばく発のとくちょうによって変わります。そこで標準光源として使うために、研究チームはいろんな望遠鏡で観測された500個のガンマ線バーストを分析(ぶんせき)しました。時間とともに明るくなったり暗くなったりするパターンを調べあげることで、研究チームはとても似たパターンで明るさを変える179個のガンマ線バーストが、おそらく同じ仕組みでばく発しているかもしれないことに気づいたのです。そして、明るさの変化から、それぞれのガンマ線バーストまでのきょりを計算しました。この方法は、遠い宇宙でのきょりを測るのに役立つと期待されます。
この発見は、ガンマ線バーストの明るさへの理解を深め、もっと遠い宇宙までを見通すのに役立つでしょう。すごいことですよね!
画像:ガンマ線バーストを使って宇宙空間のきょりを測るという、今回の研究の考え方をひとつにまとめた図。 クレジット:国立天文台(NAOJ)
ガンマ線バーストは、私たちの宇宙で、最も高エネルギーで最も明るい電磁波(でんじは:光のなかま)を大量に放出する現象です。
この記事は日本の国立天文台からの報道発表によっています。