アルマ望遠鏡は、南米チリの標高5000メートルにあるたくさんの電波望遠鏡群が連動して働く望遠鏡です。星や惑星(わくせい)ができるときや生命をつくる材料の手がかりなどが放つ非常に弱い電波を、高品質の画像としてとらえることができる高性能な巨大(きょだい)望遠鏡です。
小さなこどもがいる家庭では、おもちゃやおかしをめぐるちょっとしたけんかはよくあることです。でもたいがい、大人がいっしょに使おうねとか、仲良く分けてねといってかわいい小さな争いを解決します。ところが画像に写っているオリオン座の「星がうまれる場所」にある赤ちゃん星たちの場合はまったく別の話になります!
赤ちゃん星たちは、濃(こ)く集まったガスとちりが、自分の重さでぎゅっと集まって生まれます。星が生まれた周囲には、まだガスとちりが残っています。新しい研究によると集まったガスの一部は高速でにげだすことができ、科学者たちはこれを「高速のガス流」と名づけています。
星はほとんどの場合、ちょうどブドウ畑でブドウの房(ふさ)がいっぱいできるように、大きな集団となって生まれます。このことから考えられることは、星が生まれているところから出る高速ガス流の一部が、周りに残っているガスにぶつかって混ざりあうかもしれないということです。そうしたガスが混ざると、近くの星のでき方に影響(えいきょう)をあたえる可能性もあります。しかし、星がグループでできている場所は、そこがどれも地球から遠くはなれているため詳しくわからず、この予測を確かめることが最近までとても困難でした。
九州大学の天文学者たちは、高い性能を持つアルマ電波望遠鏡(アタカマ大型ミリ波/サブミリ波望遠鏡)を使って、約1400光年はなれたオリオン座の一部をくわしく調べました。そこは赤ちゃん星がたくさん集まって生まれているところです。おどろいたことに、FIR3という領域(りょういき)で生まれた赤ちゃん星がガスを出していて、近くのFIR4という領域にはげしくぶつかり、そこをたたいてかき乱していることがわかったのです。
天文学者たちは、この最新の観測によって、赤ちゃん星からの仲たがいが、新しい星ができるときにプラスとして働くのか、あるいはマイナスの影響をあたえるかをさらに研究できるようになりました。
画像説明:アルマ望遠鏡の観測データから作られた、オリオン分子雲OMC-2のFIR3領域の赤ちゃん星からのガスの流出とFIR4領域周囲の衝突(しょうとつ)領域です。
赤色は一酸化炭素ガス、オレンジ色はあたたまったチリ、青色は、はげしい衝突がある時に観測される一酸化ケイ素のガスを示しています。また緑色の星印は、FIR3領域にある赤ちゃん星の位置です。
提供: アルマ望遠鏡 (ESO/NAOJ/NRAO)、九州大学・佐藤亜紗子さん他。
アルマ望遠鏡は、南米チリの標高5000メートルにあるたくさんの電波望遠鏡群が連動して働く望遠鏡です。星や惑星(わくせい)ができるときや生命をつくる材料の手がかりなどが放つ非常に弱い電波を、高品質の画像としてとらえることができる高性能な巨大(きょだい)望遠鏡です。