ミーアキャット電波望遠鏡は、GRS 1915+105からふき出すこれまでに見たことのないジェットが、地球とケンタウルス座アルファ星との間の距離(きょり)のほぼ7倍にあたる30光年にわたって広がるバウショックを初めて発見し、新記録を樹立しました。
例えばTシャツにもいろんなサイズがあるように、ブラックホールにもいろんなサイズがあります。星が燃料を使い果たし、爆発(ばくはつ)して自分の強い重力でつぶれる直前の星の質量によって、ブラックホールのおおよその大きさが主に決まります。ブラックホールが大きいほど、宇宙空間への影響(えいきょう)は強く大きくなります。そして、ここに意外な事実があります!
最近の研究で、天文学者たちは、小さなブラックホールでさえ、銀河の姿を変えるとんでもない力を持っていることを発見しました。その力は、これまで考えられていたよりもはるかに大きかったのです。
ブラックホールには、銀河中心部にある超巨大ブラックホールから、もっともっと小さくて太陽数個から100個分くらいの質量を持つ恒星質量ブラックホールまで、じつに大きなものからたいへん小さなものまであります。そして、恒星質量ブラックホールというたいへん小さなブラックホールであったとしても、近くを通過する恒星をズタズタにしてしまうことがあります。このような時には強力な目に見えないジェットをふきだす形ですごい量のエネルギーが放出され、まるで消防士が消火に使用する放水のように見えます。
ホースからふきだす水のジェットとはちがい、ブラックホールからのジェットは宇宙空間を数光年も移動することができます。これらのジェットは超高速で移動し、移動中に周囲のガスと相互(そうご)に作用して、バウショックという弓状のきょ大な衝撃(しょうげき)波を発生させます。ですから、このバウショックを発見すると、ブラックホールのジェット活動と、遠方にあるその銀河の形へ長い時間をかけてどのように銀河が形作られていくかを知る良い目安となります。
最近、国際的な天文学者のチームが南アフリカのミーアキャット電波望遠鏡を使って、2つの恒星質量ブラックホール、GRS 1915+105とCygnus X-1(これまでに発見された最初の恒星質量ブラックホール)からのジェットによって引き起こされる大規模なバウショックを発見しました。
これまでは超大質量ブラックホールだけがそれが所属しているホスト銀河に広範囲にわたる影響を及ぼすと考えられていましたが、現在、天文学者は、小さなブラックホールでさえも銀河環境に大きな影響をあたえ、宇宙の時間を通じて銀河の進化を形作る可能性があるという確かな証拠(しょうこ)を見つけています。
ミーアキャット電波望遠鏡の新たな発見により、科学者たちは、同様の衝撃波が私たちの天の川銀河にもひそんでいる可能性があると考えています。科学者たちは現在、数千年前の中心にあるブラックホールの活動によって引き起こされた、私たちの銀河系内のバウショックを積極的に見つけ、銀河系ブラックホールの歴史をたどろうとしています。
画像:強力なジェットと巨大なバウショックを生み出すブラックホール系天体の想像図。クレジット:ダニエル・フッツェラー(ASTRON)
ミーアキャット電波望遠鏡は、GRS 1915+105からふき出すこれまでに見たことのないジェットが、地球とケンタウルス座アルファ星との間の距離(きょり)のほぼ7倍にあたる30光年にわたって広がるバウショックを初めて発見し、新記録を樹立しました。