AI使うと はっきり見えた
2021年7月6日

  人工知能(AI)は、ネットで映画をみる人に次にみるおすすめを紹介(しょうかい)したり、あなたがゲームに夢中になるためにはどのようなキャラを用意したらいいかなどまで、ありとあらゆる分野で使われています。またAIは、大きな倉庫で荷物を運んだり、病院でカルテなどの書類を運んだりするのにも使われています。さらに果物農家には、ブドウにいつ水やりをするのが一番いいかとか、いつレモンの枝をかり取ったらいいか、といったことまで教えてくれています。

  AIはもちろん天文学でも使われています。例えば観測画像をよりくっきりとさせることができます。ちょうど私たちが目医者さんへ行って目にあうメガネを作ってもらい、よく見えなくなった古いメガネは使わなくなるのとよく似ています(このことはメガネをかけている人ならよくわかるでしょ? 調整されたメガネをかけると世界がちがってみえますからね)。

  私たちが古いメガネでは物がはっきりと見えなくなり、新しいメガネに取りかえたい時と似たことが天文学にもあります。天文学で天体がはっきりと見えない原因は、観測データに混ざりこむ “雑音”のせいです。天体からの光に雑音が混ざると、形がはっきり見えないだけでなく、ちがった形に見えてしまうこともあります。例えば銀河の形をまちがって見てしまったり、系外惑星(けいがいわくせい)をよく似た別の天体とまちがえたりします。

  日本の天文学者チームが、最近、天体観測データの分析(ぶんせき)に、AIを使った新しい技術をうみだしました。このAIによる技術によって、雑音にうもれてはっきり見えなかった銀河の形、特に重力レンズ効果によってどのくらい銀河の形がゆがめられているのかを知ることができました。というのも、重力レンズの観測結果によって銀河の形がゆがんでいるのか、それとも、もともとその銀河が変な形なのかを区別するのは、ほんとうに難しい時があるからです。

  このチームは、スーパーコンピュータが作った実際の観測データをもとにした2万5000組の模擬(もぎ)データ・訓練用のデータを使い、AIに銀河の形を学習させました。そのあとチームはそのデータに雑音を加え、重力レンズ効果のえいきょうによる銀河の形とそうでない銀河の形を、AIがちゃんと区別できるかどうかを確かめました。そうしたらAIはうまく区別できたのです! そこで次にチームはハワイにあるすばる望遠鏡の観測にAIを使うと、今まではよくわからなかった宇宙の姿がくわしく見えたのです。

  日本の研究チームは、天文学者たちがこれまでずっと取り組んできた宇宙の地図(モデル)づくりのやりかたとよく似た方法でAIを使うと、宇宙に暗黒物質(ダークマター)がどのように分布しているかがとってもよく“見える”ことを発見しました。これは単にAIが使えたというだけでなく、今後の宇宙観測での大量データを、よりくわしく分析(ぶんせき)するためにはAIが優れた道具になるだろうということが証明されたのです。

画像説明:図は、上の面がもとの観測データで、その下はAIが雑音をとりのぞくとみえた暗黒物質の実際の分布イメージ。

出典:大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所

国立天文台による日本語サイトあり

知っ得ダネ

  AIを訓練するために2万5000組のデーターを作った日本のスーパーコンピューターは、アテルイⅡ(ツー)といい、天文学専用コンピュータとして世界で最もパワフルです。その計算能力は信じられないくらい速くて、何と1秒間に3千兆回もの計算ができるのです。

This Space Scoop is based on a Press Release from NAOJ .
NAOJ
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