この記事のパルサー、J1906は、1秒間に144回転しています。つまり、地球の自転のほぼ100万倍の速さです!
宇宙は広げた布のようなものと考えることができます。布の上に何もなく、力が働かないときは、この布は完全に平らになっています。でも何か物(天体)があると、たとえば惑星とか恒星とかがあると、それによって布は引きのばされたり押しこまれたりします。天体が重ければ重いほど、広げた布には、より深いへこみができます(この広がった布を天文学者は「時空」と呼び、へこみを「ゆがみ」と呼びます)。
この絵は、大きく描かれた白色矮星(はくしょくわいせい)と、小さく描かれているパルサーという2つの星が、おたがいに周りあっているようすです。実際は私たちにそのようすは見えませんが、画家は、時空をあらわす広げた布が、どのように星のまわりでギュッと曲がっているのかを示そうとしたのです。
パルサーは、とっても小さい空間にぎっしりとかたまった星で、1秒間に何百回も回転しながら、まわりに電波のビーム(たば)を発射しています。この電波は、ちょうど灯台の光のように、地球にいる私たちからは、ついた消えたりして見えます。
この絵の2つの星は、どちらも私たちの太陽よりは重いものですが、2つの星の間は、地球と太陽の距離(きょり)とくらべて100倍も近いところにあり、たがいに4時間で周りあっているのです! 2つの星がとても近いところにあるので、おたがいの重力が重なって、いろいろすごい影響(えいきょう)を生み出します。
コマを回し始めると、コマはただ回るだけでなくフラつきますね。おなじようにパルサーも、強い重力によってできた時空のデコボコを通ると、ふらつき始めます。
このパルサー(略してJ1906)のふらつきを測定することによって、科学者たちは、この2つの星の周りでどのくらい時空がゆがんでいるかを知ることができます。その結果、2つの星がどのくらいの質量なのか計算できるのです。
このことはとってもすごいことです。なぜって、なにもない、自由に宇宙にうかんでいる星の重さを測るんですから、非常に難しいことですね。雲の重さを測ることを考えてみてください。
このパルサーについての研究では、科学者たちはとってもラッキーでした。なぜなら、データーを集め始めてしばらくしたら、そのパルサーは消えてしまったのです! このパルサーがひどくよろめいて傾(かたむ)いたので、パルサーから出ている電波が、地球へ向かう方向からずれてしまったのです。でも、ご心配なく。また160年もしたら傾きがもどりますから。
この記事のパルサー、J1906は、1秒間に144回転しています。つまり、地球の自転のほぼ100万倍の速さです!