どの銀河も私たちから遠ざかっていくように見えるということは、私たちが宇宙の真ん中にいるからだ、というわけではありません。ブドウパンやフルーツパンが焼けるときのことを考えるとそれは簡単にわかります。パンが焼けるにつれて中に入っているフルーツはたがいに離(はな)れていきます。パンの中のどのフルーツから見ても、ほかのフルーツは遠ざかっていくように見えます。
科学者たちのほとんどは、およそ140億年前、宇宙はとつぜんビッグバンによって生まれたと考えています。そのときからずっと宇宙は進化してきていて、今私たちがみているようになりました。そしてまだまだ宇宙は成長しているのです!
宇宙は、どっちの方向をみても、遠くにある銀河が私たちから遠ざかっているようにみえます。銀河が遠くにあればあるほど、より速く遠ざかってみえます。このことを「宇宙の膨張(ぼうちょう)」といいます。
宇宙の成長、あるいは膨張というのは、いろいろな方法で調べることができます。一つの例をあげると、宇宙が生まれたあとに残った「残光(ざんこう)」を調べることです。ちょうど花火のあとに煙がたなびくように、宇宙にはビッグバンの跡(あと)が残っているのです。
もう一つの方法は、「宇宙のレンズ」という現象を使った観測です。宇宙のレンズ(「重力レンズ」ともいいます)とは、2つの銀河が私たちから見て一直線に並んでいるとき、後方の銀河からやってくる光が手前にある銀河の重力によって曲げられるという現象です。
そのため、遠くの銀河から出た光は手前の銀河によってかくされず、私たちからはゴースト(ないはずのところに見える「おばけ」)として、銀河が見えるのです。ときには遠くの1つの銀河なのに、いくつにも見えるということがあります。そのようすが上の写真のまん中に写っています。
曲げられてできた銀河の形や位置は、光がたどってきた道のりがみなちがうため、光が発せられた時の銀河の年令のちがいを表しています。これらの像を比べると、もとの銀河がどのくらい遠くにあるのかが計算できます。そしてその結果を使うと、宇宙がどれくらいの速さで広がっているのかがわかるのです。
科学者たちは、最も遠い宇宙の膨張スピードについて、新しい観測結果がそれまでの観測結果と一致(いっち)しないことを発見しました。この新しい研究によると、宇宙は今まで考えられていたよりもずいぶんと速い速度で膨張しています。
どの銀河も私たちから遠ざかっていくように見えるということは、私たちが宇宙の真ん中にいるからだ、というわけではありません。ブドウパンやフルーツパンが焼けるときのことを考えるとそれは簡単にわかります。パンが焼けるにつれて中に入っているフルーツはたがいに離(はな)れていきます。パンの中のどのフルーツから見ても、ほかのフルーツは遠ざかっていくように見えます。
この記事はハッブル宇宙天文台と国立天文台の記事をもとにしています。