磁気の壁(かべ)を作るプラズマのぶつかるようすは、天文学では「バウショック」といいます。この現象は、たとえば、高速で移動する船が海をつきすすむとき、へさきの前方に見ることができる、カーブした水のもりあがった波に似ています。日本語では「船首波」ともいいます。バウショックは、銀河団の近くだけでなく、宇宙のいたるところに発生します。たとえば、高速で移動する太陽風が地球の磁気圏(じきけん)にぶつかって、バウショックが発生しています。
見えなかった磁場の地図がはっきり見えた
天文学者たちは、銀河が集まった銀河団を研究するための新しい方法を見つけました。この新しいテクニックは、私たちが以前は知らなかった銀河団に関する新しい情報へのとびらを開くことができます。
銀河の中心にあるブラックホールからふきだしている高エネルギーのジェットを思い出して下さい。そうすると、銀河団の中に広がる磁場の「地図」が見えてきたのです。これは特に、銀河団の中で最も明るい特定の銀河の巨大なブラックホールから出てくるジェットでわかったことです。
銀河団は基本的に、ダークマターと高温プラズマでできています。たとえば、ダークマターは近くを通りぬける光で「見る」ことができるもので、高温プラズマは原子を「ばらばら」にするほどの高温のガスからできています。
銀河団どうしがぶつかったり、まわりにある物にぶつかると、それらはバウショック(知っ得ダネを参照)という現象を引き起こし、銀河団のまわりのプラズマの動きを生じさせます。この動きが目に見えない磁場とたがいに作用して、これらの銀河団内の銀河のまわに「磁場の壁(かべ)」を作ります。この「壁」は見えないため、直接検出することはたいへん難しくて、これまで、天文学者はこの磁場の壁を間接的に観測できるように、何かと作用するまで待たなければなりませんでした。
この相互作用(そうごさよう)は非常に観測しにくいため、これらの磁場の分布を調べることはむずかしい問題です。しかし今回のように、ブラックホールから出てくる高エネルギー・ジェットによってできる磁場の地図を使うと、少し簡単になるかもしれません。
南アフリカのカルー砂ばくでミーアキャット電波望遠鏡を使っている天文学者のチームが、エイベル(Abel)3376という銀河団内の明るい銀河MRC0600-399を観測しました。私たちから6億光年以上はなれた遠い銀河団です。
その中央にあるブラックホールが、非常にめずらしい方法でジェットを「ふきだし」ているのを観測しました。ちょうど折れ曲がって水平に横たわっているようなジェットです。ま上に向かうジェットは、ホースからふきだした水がガラスにあたって横に広がるように、磁気の壁にぶつかって左右に広がっています。
このよく目に見えて興味深い相互作用が、銀河団の中の銀河間の磁場はどのように働くかについての手がかりを科学者におしえてくれています。すごいことだと思いませんか?
写真左は、ミーアキャット電波望遠鏡で観測されたMRC0600-399から放出されたジェットが左右に曲がっています。右は、日本の国立天文台の天文学専用スーパーコンピューター「アテルイII」を使って作成した画像です。
画像提供:(ミーアキャット画像)チブエゼ、酒見、大村ほか ; (アテルイ II画像)大村匠、町田真美、中山弘敬、4D2Uプロジェクト、国立天文台
磁気の壁(かべ)を作るプラズマのぶつかるようすは、天文学では「バウショック」といいます。この現象は、たとえば、高速で移動する船が海をつきすすむとき、へさきの前方に見ることができる、カーブした水のもりあがった波に似ています。日本語では「船首波」ともいいます。バウショックは、銀河団の近くだけでなく、宇宙のいたるところに発生します。たとえば、高速で移動する太陽風が地球の磁気圏(じきけん)にぶつかって、バウショックが発生しています。