若い恒星のまわりの原始惑星系(げんしわくせいけい)円ばんの中で、できたばかりの惑星の写真を初めてとったのは、南米チリにあるヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTです。2018年のことで、こいガスとチリの円ばんの中にある太陽系外惑星 PDS 70bの写真です。
若い恒星(こうせい)のまわりのガスとチリの円ばんに、リングやすき間ができる理由のひとつとして、惑星(わくせい)ができている可能性が考えられます。これが本当だったら、リングのところで、どうしてめったに惑星が見つからないのでしょう?
天文学者は、惑星ができた後、リング構造を残して別のところに移ってしまうことを発見したのです!スーパーコンピュータを使った新しいシミュレーション(計算による実験)では、若い恒星のまわりで惑星が「引っこし」をすると、ガスとチリの円ばんに、いろんなパターンができることがわかりました。
アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(かんしょうけい))では、リングやすき間のいろんなパターンを観測しました。天文学者は、これらのリング構造は、円ばんの中でできた惑星がおよぼす重力のえいきょうが、原因のひとつだと考えています。しかし、そうだと言える十分なしょうこがまだ見つかっていません。
日本の国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイII(ツー)」を使った研究チームは、中心の恒星に向かって「引っこす」、つまり、惑星が最初にできた場所からはなれる様子のシミュレーションをしました。その結果、惑星がリングをはなれた後に起こる不思議な出来事を発見しました。最初、惑星が中心星に向かってはなれた時には、リングが完全な形で残っていました。しかし、だんだんとリングの形はくずれていきます。さらに、惑星の引っこし先では、ふたつ目のリングができ始めます。やがて、ひとつ目のリングが消えてなくなり、ふたつ目のリングだけが残りました。何て面白い光景でしょう!
このシミュレーションの結果から、惑星ができた場所である外側のリングあたりで、なぜ惑星が見つかりにくいのかを説明することができそうです。天文学者は今、このシミュレーション結果と本当に同じことが起こっているのか、実際の宇宙で調べることができる観測をしたいと思っています。
図は、アテルイIIを使ったシミュレーション結果(上)と、アルマ望遠鏡で実際に観測された円ばん(下)を並べたものです。左は、惑星が移動を始めた時で、外側にガスとチリのリングができています。真ん中は、ふたつ目のリングができている時、右は外側にあったひとつ目のリングが消えてふたつ目だけが残った時です。そして点線は惑星の位置を、灰色部はシミュレーションで計算できなかった部分です。
画像:金川和弘(茨城大学)、アルマ望遠鏡(ESO:ヨーロッパ南天天文台 / NAOJ:日本の国立天文台 / NRAO:アメリカ国立電波天文台)
若い恒星のまわりの原始惑星系(げんしわくせいけい)円ばんの中で、できたばかりの惑星の写真を初めてとったのは、南米チリにあるヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTです。2018年のことで、こいガスとチリの円ばんの中にある太陽系外惑星 PDS 70bの写真です。
この記事は日本の国立天文台からの報道発表によっています。