AIとスーパーコンピュータ、より遠くを、よりはっきり見るのに役立つ
2022年8月15日

宇宙の進化を理解するために、天文学者は使っている方程式の数字を色々と変えてみます。なぜならこれらの数字は、宇宙をどのようなものか考えて作るモデルによって違うからで、最良の数字は宇宙の実際の観測と良くあっています。


これらの複雑(ふくざつ)な方程式を解くには多くの時間と費用がかかりますが、AI(人工知能)と天文学の大量の観測データを組み合わせた新しい技術の助けを借りることで、少し簡単になりました。

研究者チームは、まず方程式の数字をいろいろ変えて、スーパーコンピュータの中に計算上の宇宙を作る実験しました。その結果をAIに学習させて、スーパーコンピュータを使わなくても同じ実験ができるソフトウェアを開発し、パソコンで計算できるソフトウェアを作りました。

この仕組みを実行するには、スーパーコンピュータで数十時間かかり費用もかさみます。しかし、このソフトウェアを使用すると、パソコンで 1 CPU 秒 (CPUとは、コンピュータが計算を実行する時間のことです) という速さで結果を得ることができます。

チームは、国立天文台 (NAOJ) が運用する天文学専用の世界で最も強力なスーパーコンピュータである「アテルイⅡ」の中に計算上の宇宙を作ってみました。その結果をAIに学習させ、パソコンでも同じように宇宙を作れるようにしました。そして、パソコンの中に再現して宇宙と、スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)の観測から得た実際の銀河分布のデータをこのシステムに当てはめてみました。

結果は非常に良好で、物質(主に直接観測できないダークマター)は宇宙のエネルギーの 30% のみで、残りの 70% は宇宙を膨張(ぼうちょう)させるダークエネルギーであることが確認されました。また、従来の分析(ぶんせき)方法では得られない精度で、いくつかのたいへん正確な結果を得ることができました。

いま進行中か将来の研究から得られるデータと組み合わせることで、この仕組みを使って、私たちの住む宇宙についてさらに多くのことがわかるでしょう。

画像:スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)によって実際に観測された宇宙の一部を拡大 (左)したものと、くりかえし計算された暗黒物質でできた計算上の銀河 (右)。 提供:西道啓博(にしみち たかひろ)さん

知っ得ダネ

「アテルイⅡ」は1秒間に3000兆(ちょう)回の演算を行うことができます。つまり、3の後に15のゼロが続くほどのとほうもない回数です。
 

This Space Scoop is based on a Press Release from NAOJ .
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