天の川銀河の中心にある超巨大ブラックホール「いて座A*(エースター)」を、天文学者が2022年に初めてさつえいしたことを知っていますか?ブラックホールは全く光を出しませんが、写真をみると、周りで光りかがやくガスによって、明るいリング状の形に囲まれた「シャドウ(かげ)」のような暗い中心部分に、ブラックホールがあることがわかります。
青空に雲がうかぶ晴れた日に、庭に出たり、散歩に出かけたりしてみましょう。そして上空の雲を見てみてください。想像力を働かせて、雲がどんな面白い模様や形に見えるか、できるだけたくさん思いうかべてみましょう。まるで空に描いた「絵」を当てるゲームですね!実は、変わった形のガス雲は、地球だけでなく、宇宙にもあるのですよ。
慶應義塾大学(けいおうぎじゅくだいがく)の研究チームは、ハワイ島マウナケアにあるジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡と、国立天文台野辺山の45メートル電波望遠鏡の観測データを使って、変わったガス雲を発見しました。この雲は、曲がった形をしているので「おたまじゃくし」分子雲(ぶんしうん)というニックネームがつけられました。おたまじゃくし分子雲は、いて座の方向、地球から約2万7000光年はなれたところにあります。
研究チームは、重くて小さな天体が、おたまじゃくし分子雲の曲がった形の原因ではないかと考えています。分子雲は何か重い天体の周りを回りながら、その重力で引きのばされているように見えるからです。ちょうど、ネットに石を落としたときのように。そこで、ちょうど太陽系の天体が太陽の周りを回っているように、おたまじゃくし分子雲の軌道(きどう)の中心に、明るくて重い天体がないか探してみました。しかし驚いたことに、そんな天体は何もなかったのです!
天文学者は、おたまじゃくし分子雲が暗い天体、おそらく太陽の10万倍の重さのブラックホールの周りを回っている可能性が高いと考えています。ブラックホールの存在を確認するには、近くにある天体の運動を調べるしかありません。しかし今の時点では、いくつブラックホールがるのか、どのくらい重さのブラックホールなのかについて、はっきりとはわかっていないのです。
研究チームは、今後アルマ望遠鏡を使って、おたまじゃくし分子雲の軌道の中心にあるブラックホール(または、もしかしたら、ほかの種類の天体)をつきとめられる、かすかな電波を探す予定です。この方法で、おたまじゃくし分子雲の変な形の原因がわかるのではないかと期待しています。
画像:おたまじゃくし分子雲と、その軌道の重力中心にあるブラックホールの想像図。(クレジット:慶應義塾大学)
天の川銀河の中心にある超巨大ブラックホール「いて座A*(エースター)」を、天文学者が2022年に初めてさつえいしたことを知っていますか?ブラックホールは全く光を出しませんが、写真をみると、周りで光りかがやくガスによって、明るいリング状の形に囲まれた「シャドウ(かげ)」のような暗い中心部分に、ブラックホールがあることがわかります。
この記事は日本の国立天文台からの報道発表によっています。