宇宙の巨大オバケ、成長のヒミツ
2023年8月3日

ブラックホール、特に若いブラックホールがどのようにして急に成長し、すごく巨大なブラックホールになるのかという疑問が、長い間天文学者をなやませてきました。日本の国立天文台(NAOJ)が運用する最先たんの日本の電波望遠鏡ネットワークであるVERAVLBI Exploration of Radio Astrometry)が、最近、天文学者にこの疑問に対する重要な手がかりをあたえました。

研究の結果、ほとんどすべての活発に電波を出している活動(かつどう)銀河の中心には強い電波を出す超大質量(ちょうだいしつりょう)ブラックホールがあることが知られています。これらのブラックホールは本当に巨大で、太陽の質量のほぼ100万倍、時には10億倍の質量があるのです。時には、若いブラックホールが成長して強力なクエーサーという宇宙で最も明るい天体になることさえあると考えています。しかし、これらのブラックホールがどのように成長するのかは正確にはわかっていません。

このために、天文学者の国際チームは、活動銀河のひとつである狭輝線(きょうきせん)セイファート1型銀河(NLS1)という天体を研究しはじめました。これらの銀河は、急速に成長しているブラックホールがあると考えられています。これらの「宇宙の巨大オバケ」とも考えられるブラックホールの初期のすがたを研究するのにぴったりです。チームは、くわしく観測できるVERA望遠鏡を使って、6つのNLS1銀河の中心部を観測しました。それらの銀河の中心核(かく)から来る偏光した電波(偏波:へんぱ)、それもかすかな量ですが、を検出しました。偏光とは光の伝わる性質がある方向にかたよったものです。

この偏波の検出による豊富なデータにより、天文学者はまた、銀河中心核の周りに大量のガスがあるという重要な証こをつかみました。宇宙のオバケは、これらのガスをむしゃむしゃ食べて、より速く、より強力に成長したに違いないと考えられます。

画像説明:周囲へガスを流出しながら急速に成長している超大質量ブラックホール(右上)から放出されたジェットと、地球で観測された偏波(へんぱ)の想像図。
提供:日本の国立天文台(NAOJ)

国立天文台による日本語サイト

https://www.nao.ac.jp/news/science/2023/20230719-mizusawa.html

関連したVERAによる日本語サイト
https://www.miz.nao.ac.jp/veraserver/hilight/20230719_NLS1/

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This Space Scoop is based on a Press Release from NAOJ .
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