ガンマ線をはき出す「宇宙のクモ」
2022年1月19日

天文学者のチームが宇宙にいる明るい「クモ」を発見しました。2つの星がおたがいのまわりをまわっている、とても変わった連星系です。地球から2600光年ほどはなれたところにあるのが見つかりました。

この連星系は他の連星系と違っているとことがあります。2つの星のうちのひとつは白色矮星(はくしょくわいせい)になろうとしている恒星(こうせい)で、もうひとつはなんとパルサーに変化したばかりの中性子星なのです。

科学者たちはこのような連星系に「クモ」というあだ名をつけました。なぜならこのパルサーは、白色矮星に変化しようとしているお隣さんの表面を「食べて」しまうからなんです。

一番初めに見つかった「クモ」が、4FGL J1120.0-2204と呼ばれるこの連星系です。今までに発見されたガンマ線の中で2番目に明るいガンマ線を出しており、それが連星系であることが最近になってようやくわかりました。

天文学者のチームは南米チリの4.1m SOAR望遠鏡を使って、このきみょうなガンマ線の源をくわしく調べましたが、それが何なのかはすぐには明らかになりませんでした。そしてやっとその天体がミリ秒のパルサー(1秒に数百回というものすごい高速で回転するパルサー)と、とても小さな質量の白色矮星に変化しようとしている恒星(こうせい)でできていることがわかったのです。

この強いガンマ線とエックス線のおかげでこのパルサーの正体がわかりました。可視光線のスペクトルを調べると、赤色から青色に変化していることがわかったのです。ドップラー効果によって私たちに近づく天体はより赤っぽく、はなれていく天体はより青っぽく見えます。このようにして天文学者たちはこの白色矮星が大きなパルサーのまわりをまわっていることを発見したのでした。

白色矮星は私たちの太陽と同じくらいの質量か、それよりも小さな恒星が終わりをむかえる時に生まれます。太陽のような恒星が水素を使い果たすと、燃料を作る核融合(かくゆうごう)を続けるためにヘリウムを燃やし始めます。すると高温になって収縮(しゅうしゅく)し始め、その後にふくれあがって赤色巨星になります。核融合が止まるとふくれあがった赤色巨星は地球くらいの大きさの白色矮星になりますが、その時の温度はなんと10万度に達します。4FGL J1120.0-2204の「クモ」の白色矮星がここまで進化するには20億年くらいかかるでしょう。

ミリ秒パルサーはおよそ100分の一秒ごとに回転するので1秒間に数百回も回転します。その運動に使うエネルギーは近くにある天体の物質を飲みこんでそれを力にしているのですが、この「クモ」の場合は白色矮星になろうとしているおとなりの天体が飲みこまれているのです。ペアの相手が出している物質にパルサーが出す風がぶつかると、パルサーはまるで「獲物(えもの)をつかまえるクモが糸をはき出すようにガンマ線やエックス線をまき散らすのです。

この発見は、今まで見つからなかった連星系の進化についてのなぞを解くかぎになるかもしれませんね!

画像:連星系の中で進化している白色矮星(大きい方の星)とミリ秒パルサー(右の小さい方の星)の想像図

クレジット:米国国立科学財団/国立光赤外線天文学研究所(NOIRLab)/全米天文学大学連合(AURA)、J.ダシルバ氏(Spaceengine)

謝辞:M. ザマミ氏(NSF's NOIRLab)

知っ得ダネ

超低質量の白色矮星は80個ほど見つかっていますが、パルサーや中性子星のまわりをまわっているのを発見したのはこれが初めてです。1910年にウィリアミーナ・フレミングがチームの一員として白色矮星を発見しました。1967年にはジョスリン・ベル・バーネルがパルサーを発見した最初の天文学者になりました。パルサーの研究は女性天文学者の活躍が有名な分野ですよ。

This Space Scoop is based on a Press Release from NOIRLab .
NOIRLab

この記事は米国国立科学財団 国立光赤外線天文学研究所(NOIRLab)の報道発表によります

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